- Point of view
GBS進化のための5つのステップ
新たな未来を見据え、企業は、混乱への対応から、再びイノベーションと成長のための計画を前進させる方向へとシフトしています。組織の中心的な役割として、社内外のビジネス全体を見渡せる位置にあるグローバルビジネスサービス(GBS)は、企業を支援する上で非常に重要です。信頼できるサービスデリバリーパートナーであるGBS組織は、昨今の不確実性の時期においても期待されたレジリエンスを提供してきました。しかし、ビジネス要件の変化や、需要の高まりを受け、GBSはさらに成熟度の曲線を進まなければなりません。次世代のGBSは、コスト削減とトランザクション業務の枠を超える成長を遂げてきました。GBSは、ビジネスを結び付け、機会を活用し、意思決定を促し、収益成長をもたらすことで、今も進化を続けています。しかし、GBSの規模を拡大するには、複雑性と文化の変化に対応すべくきめ細かな計画と実行が必要になります。20年以上にわたってシェアードサービスとグローバルビジネスサービスを設計、運用してきた経験とデジタルトランスフォーメーションのスキルを活かし、GenpactはGBSを進化させるための体系的なアプローチを開発しました。
単機能的な集約から包括的なサービスへ
多くの組織はいまだにGBSの成熟度に関して細分化・トランザクション業務の段階にあります(図1)。サイロ型の経営モデルは成長には逆効果であり、シェアードサービスセンター(SSC)はその典型的な例です。単一機能による反復的な業務のみを提供する場合が多く、企業にコスト節約以上の付加価値をもたらすことはほぼありません。
図1:エクスペリエンス重視型GBS成熟度モデル
GBSの進化は急速に加速しており、組織は意思決定を促すデータ主導のインテリジェンスおよびインサイトという、GBSからのより広範なビジネスプランにおけるサポートを期待していることから、コスト削減は後回しとなり、戦略的ビジネスパートナリングが優先されています。
焦点を効率アップから成果を挙げることへと移すのであれば、組織はデジタル主導型にならなければなりません。オートメーションおよび人工知能(AI)、アナリティクスを採用することで、ユーザーや従業員、顧客など、人々が各自の役割をよりよく果たし、情報に基づいたより強固な意思決定プロセスをサポートできるようになります。
ここで重要なのは、最終のステージが顧客の声によって形作られるエクスペリエンス主導型GBSであるということです。この最終レベルでは、効率化を目指してエンドツーエンドでカスタマージャーニーを作成し、顧客のペルソナを明らかにすることでエクスペリエンスのパーソナライゼーションを可能にし、社内外でコネクテッドエコシステムを構築し、トランザクション処理からビジネスパートナリングへの移行に進んでいます。
組織は次の5つのステップにより、GBS成熟度を次のレベルまで達成することができます。
ステップ1:状況を確認する
現在のGBSモデルが生み出す価値を評価するために、以下について考察してみてください。
- 最初のビジネスケースで提示した投資利益を実現しましたか?
- 経営陣はGBSがもたらす価値を認識していますか?
- 強固なガバナンスとグローバルプロセスオーナーを有していますか?
- トランスフォーメーションのためのプラットフォームを有していますか?
- エンプロイーエクスペリエンスとカスタマーエクスペリエンスの満足度は向上しましたか?
- コスト以上の価値を実現していますか?
現在の状況を把握することが、先に進むための秘訣です。そして、社内の顧客および従業員の声に耳を傾けることで、社内の顧客と従業員にどのように見られているのか、そしてどのやり方を変える必要があるのかを実際に把握することができます。 社内の顧客と従業員をGBS開発アドバイザリーボードやワーキンググループのメンバーにすることで、透明性を通じて信頼を築き、共同で計画を練り、経営陣の賛同を得る継続的なコミュニケーションのためのプラットフォームが構築されます。
この記事を保存する
ステップ2:ビジョンを定める
将来を見据えた強力なGBSビジョンによりステークホルダーを鼓舞し、変化を促します。コスト削減にとどまらず、その先にある戦略的ビジネスパートナリング、より価値の高いサービス、トランスフォーメーションによる成果に目を向けてください。
組織の重要な戦略的ビジネスプランと、計画の策定に重要な以下の2つの分野について検討してみてください。
人々に権限を与える
すべての企業にとって最も重要なのは人です。人材に投資し、チームを支援し、各自に役割と責任を割り当てることで、 エンゲージメントと満足感を維持するための有意義なワークエクスペリエンスを生み出すことができます。
- 質の高いタレントプールを構築する – 様々な事業および地域全体でコンピテンシーを活用し、適切なスキルおよび能力を開発し、最高の人材を誘致・保持します。
- グローバルプロセスオーナーシップを確立する – グローバルプロセスオーナーは卓越したエンドツーエンドプロセスを提供する責任を負い、トランスフォーメーションとチェンジマネジメントを可能にします。
- サービスデリバリーを見直す – オンショア、ニアショア、オフショア、ワークフロムエニウェアのサービスデリバリーオプションを通じてレジリエンスを高めます。
- 上質なカスタマー/エンプロイーエクスペリエンスを生み出す – カスタマージャーニーを作成し、顧客のペルソナを明らかにし、従業員と顧客の声に耳を傾け、満足度の評価を行うことで、エクスペリエンスを高めます。
インテリジェントオートメーションを導入する
人間のインテリジェンスを高度なオートメーションとAIからのインサイトで拡張することで、GBSの焦点が付加価値サービスへと移行し、職場の文化を再活性化することが可能になります。
- トランザクション処理を自動化する – 低コストのゼロタッチプロセス向けのデジタルテクノロジーを用いてエンドツーエンドプロセスを再設計します。
- 継続的改善に投資する – プロセスマイニング技術を利用してエンドツーエンドでプロセスを可視化し、効率を妨げる障害を特定・解決します。
- グローバルな協力を可能にする – クラウド技術とコラボレーションツールを用いて物理的距離を埋めることで、社内外のビジネスをつなぎ、知識の共有を促します。
- データとアナリティクスを活用する – Cスイートの意思決定を導くリアルタイムの予測的インサイトを実現するためにAIと機械学習を採用します。
ステップ3:準備状況を評価する
高機能で拡張性に優れたGBSの変革は、能力、エクスペリエンス、行動のギャップを解消します。GBS成熟度モデルにより、自社および同業他社のGBS成熟度をマッピングすることができます。このタイプの診断ツールは、すべての重要な機能と基礎となるプロセス、関連アクティビティの徹底的かつ客観的な評価を提供します(図2)。分析結果は、GBS進化に対する準備状況を実証的なインサイトで示し、どの分野の改善を優先すべきかがわかります。"
図2:GBSプロセスおよび機能
ステップ4:今後の道のりを描く
ビジョンを実現するためには、重要な取り組みを優先し、実用的なロードマップを作成することが重要です。ロードマップは俊敏なものでなければならず、新たな情報やフィードバックを入手し、想定の変化に合わせて進化していかなければなりません。ロードマップが更新されるたびに、GBSビジョンと方向性を再確認する必要があります。
GBSプレイブックは、トランスフォーメーションの成功に不可欠なもう一つの構成要素です。トランスフォーメーション実施のためのアプローチと主要なビルディングブロックの詳細を決定し、基本戦略および指針を文書化することで、社内外のステークホルダーからの賛同と協力を得ることができます。
ステップ5:進行する
GBSのトランスフォーメーションを無事成功させるには、時間と粘り強さ、そして何よりもステークホルダーとの継続的なコミュニケーションが必要です。達成のためには、以下の要素が必要となります。
- ペースを維持する – トランスフォーメーションには文化的変革が必要ですが、これには進化を遂げる前にプログラムが行き詰まるのを防ぐため、注意深いチェンジマネジメントが不可欠です。
- 計画に忠実に – 程度の大小にかかわらず計画から逸れてしまうこともよくあることですが、非常に小さな変化であっても大きな影響を及ぼし、成功を妨げる可能性があります。進捗、成果、変化を評価するための強力なガバナンスモデルにより、予定通りに計画を進めていきます。
- コミュニケーション – 不満ではなく受容を促すために、コミュニケーション戦略を策定し、ビジョンと変化がもたらすメリットを伝えます。"
ケーススタディ
ビジョンに向かって前進する
ある大手グローバル保険会社のGBS組織は、壮大なビジョンを掲げていました。
- 強固なサービスデリバリーモデル(オフショア、ニアショア、オンショア)
- 地理的専門知識とグローバルな視点を提供するセンター・オブ・エクセレンス
- データ主導型のインテリジェンスに促されるトップの意思決定
- テクノロジーで強化された知識豊富な従業員による計画実行
- パフォーマンス指標と前向きな姿勢に支えられた効果的な継続的改善プログラム
私たちは、このトランスフォーメーションを実現するために行動指向の3か年ロードマップを定義し、GBSのトップが自信を持ってビジョンを推進するための準備を支援しました。
財務・会計サービスのページを見る
GBSを次のレベルに引き上げる
GBSが提供できるのは、単なるトランザクションタスクの管理やコスト削減だけではありません。GBSは、スコープ拡大の明確なビジョン、スケールアップの準備状況の理解、そして綿密に練られたロードマップによって、組織の中心に位置づけられるようになります。